旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

「飛ぶ教室」と村上春樹

50歳を越しますと、子供時代に読むことのなかった古典的児童文学を自分から手に取ってみることは、まったくと言っていいほどありません。読みたい新刊書は次から次へと出版されますし、読み返してみたい本や読んでいない古典は山ほどあります。児童文学に割く時間がないのです。


先日、創刊のご祝儀で「ちいさな王子」以外を内容も見ずに買ってきた光文社古典新訳文庫の中の1冊にケストナー(丘沢静也訳)の「飛ぶ教室」(ISBN:4334751059)がありました。書名は知っていましたが読んだことはありません。たぶん、こんな機会がなければ読むことはなかったのでしょうが、すてきな読書の時間を届けてくれました。


ギムナジウムの5年生5人の友情と成長の物語に、彼らが尊敬する舎監の教師とその旧友の物語がからみあった心温まる小説なのですが、作者も作品世界と密接な関係を持っています。
少年5人には私たちの中にある能力や性格が多少誇張して振り分けられていますが、ひとりひとりとしても魅力的に造形されています。敵役の少年もなかなかいかしています。
飛ぶ教室」とは物語を作ることが得意な少年がクリスマス祭で上演するために書き下ろした芝居のタイトルです。これが宮澤賢治の童話の世界によく似ているのです。


飛ぶ教室」を読みながら、村上春樹少年はこの小説の愛読者だったんだろうななんて考えていました。
目次の書き方は「羊をめぐる冒険」そのものです。それと、この小説は雪が降る中「メリークリスマス」で終わります。
鼠もホワイト・クリスマスの日に小説を書き続けていたのでしょうね。