旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

山田寛「ポル・ポト<革命>史」を読んで

講談社選書メチエは何冊か読んで面白かったこともあり、書店でもよく立ち読みをしている選書です。
先日もキリスト教関連の本を探して同選書の背表紙を眺めていたのですが、ふと山田寛「ポル・ポト<革命>史」(ISBN:4062583054)が目にとまり、買って帰りました。


ポル・ポト政権についての本を読むのは初めてです。大量虐殺については新聞や雑誌の記事で読んだくらいで、それ以上に知ろうとはしてきませんでした。
ポル・ポトが政権を握った時期、私は二十代の前半でしたが、新聞ではカンボジアの政情についてはさほど取り上げられなかったような気がします。大量虐殺に関しても報道はだいぶ遅れていましたし、実際に起こったのかを疑問視する声も多かったようでした。まして人口800万人の国で200万人近い人びとが殺されるなど、あり得ないことだという声が、当時は大勢を占めていました。


私は少ない知識から、ポル・ポトという人は理論家であると思いこんでいました。
中産階級のエリートが留学先のパリで社会主義に目覚め、祖国解放運動のリーダーとなった。しかし祖国の民衆のリアルな姿を知らない彼は、信奉したスターリニズムに振り回され、自らは望まなかった独裁者となっていった、なんてね。
でも、このポル・ポトという変名を持つ男は、頭が悪いうえに勉強もしない、左翼知識人の悲劇とは何の縁もなかったようです。
子供たちを親から離し、文盲の少年兵士として訓練を積んだベトナム兵の前に放りだした彼は、政権を追われてから再婚によって得た初めての我が子を溺愛していたとのことです。そこには、憎むべき厚顔無恥の大衆がいるだけです。
しかし、カンボジアの悲劇の原因をそこのみに求めることは、もちろん間違っています。