旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

湯豆腐=鱈ちり

いつ食べてもいいのですが、冬に食べると余計おいしいのがおでんと鍋料理です。あまたある鍋料理の中で私が一番好きなのは、シンプルな鱈ちりです。


子供の頃、我が家では鱈ちりを湯豆腐と言っていました。そして、鍋料理はそれだけでした。寄せ鍋や牡蠣鍋、石狩鍋といった調味された汁で煮る鍋料理を知ったのは、お酒を飲むようになってからです。
私はずっと湯豆腐=鱈ちりと思いこんでいました。豆腐だけの湯豆腐なんて、豆腐を売り物にしている京都の有名店だけのものさ、と考えていたのです。
もちろん今では湯豆腐は豆腐だけか、せいぜいネギを加えたものであることを知っています。それに豆腐の下には昆布がしいてあることも‥‥。


私の母は茨城県陸の孤島のようなところで育ったせいか、魚料理は作るだけでなく、食べることも苦手でした。村には魚屋はなく、まれに訪れる引き売りだけが海の魚を買う唯一の手段でした。
近所に海釣りを趣味にする人はいませんでしたから、お裾分けもありません。また、村を流れる川は細々としていて、食卓に載せるような川魚は捕れません。ですから、どこの家でも一斗缶に入った霞ヶ浦で捕れるワカサギの半干しを常備していました。


そんな母ですから、鱈ちりを知っていたわけがありません。それを湯豆腐と呼んでいたのは、たぶん当時の下町に共通した言い方だったからでしょう。
でも、あのころは湯豆腐がそんなに好きではありませんでした。鱈のおいしさは、子供にはなかなかわからないものですよね。