旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

おでんは屋台の味

デパートなどで高級な練り物を買ってきて家で作るおでんはもちろんおいしいのですが、子供のころに5円か10円で買い喰いをした屋台のおでんの味が今でも忘れられません。


下町にはおでんの屋台が多く、毎日どこかで見かけることができました。それらの屋台ではお酒を出すことはなく、引き売りと言ったほうが正確かも知れません。お客は小遣いを握りしめてやってくる子供たちか、夕食のおかずにと買っていくおかみさんたちです。
おでん種や味はどの店もほとんど同じです。値段もそう。
しかし、私には大好きな屋台がありました。その屋台には他の店にはないおまけがあったのです。味噌だれです。
味噌だれは白いホーローの容器に入っていました。「おじさん、つけて」と言えば串に刺したおでんをそれに浸してくれます。その屋台のおじさんの人当たりも、とてもいいものでした。
はんぺんと昆布は味噌だれと相性がよくありませんでしたが、ほかの種はぐっとおいしくなりました。味噌だれはやや甘く、コクがあります。おそらく自家製だったのでしょう。


橋場を離れてからもあの味噌だれの味が恋しくなり、味噌田楽などをあちこちで食べてみましたが、あの味に巡り会うことはありませんでした。たぶん、記憶が薄れるのに従い、味のほうはどんどん理想化されていったのでしょう。
まだ試していない大阪のドテ焼きに希望を託しているのですが、さていかがなものでしょうか。