ニコライ堂を出て聖橋を渡り湯島聖堂に向かいます。聖橋の名は両聖堂を結ぶことから付けられました。天気は快晴、少し風がありますが暖かく、とても二月中旬とは思えません。
江戸幕府の直轄の学校であった昌平坂学問所(湯島聖堂)に<裏口>から入ります。階段を降りた左側に孔子を祀った大成殿があります。大成殿は元禄3年(1690年)に創建されましたが何度も火災にあっていて、現在の建物は昭和10年(1935年)に竣工した鉄筋コンクリート造のものです。
大成殿前の階段はさだまさしの「檸檬」に登場しています。
或る日湯島聖堂の白い石の階段に腰かけて
君は陽溜りの中へ盗んだ檸檬細い手でかざす
「君」は聖橋から食べかけの檸檬を神田川に放り投げるのですが、それは「喰べかけの夢」であり、川面の波紋の広がりに去っていった恋人との思い出を重ねます。
私がここで感傷にふける必要もないので、さっさと階段を上りました。誰もいない黒色の大成殿の前の広い石畳に立つと、思わず「静寂」という言葉が浮かんできました。
黒い建物と緑青が噴いた屋根の組み合わせはとてもきれいなのですが、コントラストが強く、写真に撮るのは難しいですね。