旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

滝川とは誰か

「予感」

落語「崇徳院」で、お嬢さんが残していった短冊に書かれていたのは、崇徳院の和歌の上の句「瀬を早み岩にせかるる滝川の」でしたが、滝川という言葉を聞くと思い出す歌があります。それは中島みゆきの「誰のせいでもない雨が」で、アルバム「予感」に収録されています。


「誰のせいでもない雨が」の歌詞は生硬な言葉で綴られていますが、難解な内容ではありません。しかし、唐突に入ってくる最後の聯のふたつの固有名詞が、緊張感と不安感を与えるのです。「これは何を歌ったものなのか」と。

きのう滝川と後藤が帰らなかったってね
今ごろ遠かろうね寒かろうね
誰かあたしのあの人を助けてよねと
跣の女が雨に泣く

この滝川と後藤について、曲の中には何の説明もありません。たぶん、どちらかは雨の中で泣いている跣の女の恋人の姓なのでしょう。


この曲を初めて聞いたとき、私は連合赤軍事件を思い浮かべました。繰り返して聞くうちに、これは永田洋子の視点から歌われているのではないかとも考えるようになりました。奇をてらった感想と思われるかも知れませんが、引用した部分の前の歌詞を読むと、あながちそうでもないと、思っていただけるのではないでしょうか。

船は港を出る前に沈んだと
早すぎる伝令が火を止めにくる
私たちの船は永く火の海を
沈みきれずに燃えている

連合赤軍事件が提議したアポリアは、まだ沈みきれずに燃えています。