旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

短冊はどこから

「第十六回 三遊亭王楽の天狗道場」、開口一番は三遊亭かっ好さんの「寿限無」です。
かっ好さんは昨年の【江刺寄席】でも開口一番をつとめてくれました。半年ぶりに聞くかっ好さんですが、成長の跡がうかがえます。
会場をほんのりと暖め、王楽さんにかわります。


王楽さんの一席目は「崇徳院」で、今回のゲストの入船亭扇遊さんに習った噺だそうです。
崇徳院」といえば桂三木助の十八番です。扇遊さんの師匠である入船亭扇橋さんは、小さん門下としての印象が強いのですが、もともとは三木助の弟子でした。
そんなわけですから、王楽さんの「崇徳院」は三木助からの正当な流れを継ぐもので、実際にも三木助の噺を、クスグリは変えていましたが、きちんと蹈襲していました。


崇徳院」は上方で生まれた噺で、私は桂枝雀で聞いたことがあります。噺の内容は、(当然のことですが)若旦那とお嬢様の出会いの場所が異なるくらいで、ほとんど同じです。枝雀は高津神社としていました。*1
ただ、微妙ですが気になる違いがあります。崇徳院の和歌の上の句を書いた色紙の出場所です。


王楽さんは、桜の枝に結ばれた色紙の糸がほどけ、落ちてきたそれをお嬢様が拾い上げ、じっと見つめてから若旦那に渡した、としています。色紙は偶然にそこにあらわれたのです。
枝雀ではお嬢様が書き、若旦那に手渡すことになっています。お嬢様は自ら意思表示をしたのです。


さて、どっちがいいのでしょうか。
東京版はあまりにも出来すぎです。関西版は、それほどに積極的なお嬢様が、恋患いで寝込んでしまうという点で納得がいきません。
しかし、この季節に演じるならば、満開の桜の枝からはらはらと落ちてくる運命の色紙の方がいいのかな。


王楽さん、扇遊師匠の前であがっていたのか、言い間違いや咬むところが少しありました。じっくりと大事に育てていって欲しい噺です。

*1:枝雀は下の句をつかったオチは演じていませんでした。私もこの方がいいと思います。