旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

リレー翻訳

新潮文庫

亀山郁夫訳の光文社古典新訳文庫版「カラマーゾフの兄弟」最終巻は今月は出ないようで、第四部は手持ちの原卓也訳による新潮文庫版を読むことにしました。なんだかリレー落語みたいです。
やはり分冊になっている文庫本は、全巻が揃ってから読み始めた方がいいようです。長い小説を読むにはスピードが大切です。


原卓也訳は新潮文庫に収められてからでも30年近くが経過しています。村上春樹が、翻訳には賞味期限があると言っていましたが、確かに原卓也版はそれに近くなっているようです。


私が原卓也の翻訳を初めて読んだのは中学2年生のときでした。中央公論社の「世界の文学」の一巻、トルストイの「復活」です。なんだか、とてもすらすら読めたことを覚えています。
「世界の文学」は挿絵入りで、カチューシャの妖艶さに心をときめかしたものでした。


あの頃は文学全集ブームで、各社からいろいろなものが出ていました。が、世界文学全集は訳文が古く、日本文学全集は内容が似たり寄ったりでした。
それらの中で、中央公論社版は異彩を放っていました。赤の「世界の文学」は新訳が多く、青の「日本の文学」は戦後の作家にも力点が置かれていたのです。


文学全集は最近ではすたれてしまいましたが、国別に編集されていた集英社の「世界の文学」の何冊かは興味深く読みました。でも、それでさえももう20年前のことです。