旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

さすが真打ち!

「健全なる精神」

6月10日の便りに「すべからく」の誤用について書きましたが、呉智英さんの新刊「健全なる精神」にまたまた大物の誤用が紹介されていました。


なんとあの岩波書店の書籍広告にあったというのです。その本は宮嶋博史氏他三名の編による「植民地近代の視座」で、呉先生はこう書いています。

「近代とは、すべからく植民地近代である」
こうもぬけぬけと植民地主義を讃美した書物を私は知らない。近代国家は、近代人は、義務として植民地主義の道を歩まなければならないと言うのだ。

「近代とは、すべからく植民地近代である」は件のキャッチコピーです。
そうです。さすが「すべからく」誤用批判の真打ち、藝が違います。誤用を指摘するのではなく、それを逆手にとっているのです。*1


「開き直った植民地主義者」というこの文は「岩波書店も落ちるところまで落ちたものである。」と結ばれています。
「すべからく」を誤用するような社員がいるからではなく、「近代という時代は植民地主義が当然であり、義務であるなどと臆面もなく主張」するような書物を出版するようになってしまった岩波書店に対して、先生は悲憤慷慨しているのです。


「健全なる精神」にはあと三箇所「すべからく」問題が取り上げられています。
吉川潮氏も「すべからく」人間だったんですね。「江戸前の男 春風亭柳朝一代記」など、藝人を主人公にした小説は好きだったのですが、もう新刊は買わないことにします。

*1:高島俊男さんの「同期の桜」を読んだばかりなので藝と表記しました。でも、なぜそうしたかは、すぐに忘れてしまいそうです。