旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

「円朝芝居噺 夫婦幽霊」(承前)

引き続きまして申し上げまする。


円朝芝居噺 夫婦幽霊」のブックカバーは凝った作りになっています。
トレーシングペーパーのような半透明の紙の裏には、円朝が所蔵し、全生庵に寄贈された円山應岱の「夫婦幽霊図」が裏返しに印刷されています。カバーの表から見ると、この絵が正しい像でぼんやりと浮かび上がり、書名と著者名がその両脇に印刷されているのです。
夫の幽霊はされこうべを持っていますが、「夫婦幽霊」の最後にその説明があります。


私にはこの絵が稚拙としか見えないのですが、辻原登はこの絵から「夫婦幽霊」という噺をこしらえたようです。
が、「夫婦幽霊」の第五回(完結篇)の訳者注には「われわれの真の作者捜しは、速記符号原稿の訳了についに追いつけなかった。」と書かれています。
その後に「訳者後記」が30頁ほどあってこの本は終わります。「夫婦幽霊」の本文の前には原稿の発見の経緯などが書かれているのですが、その部分は巻を開くといきなり始まっていて、「前書き」などとされていません。


さて、この「訳者後記」で「夫婦幽霊」の作者があぶり出されます。
まず、廃嫡された円朝の息子、出淵朝太郎の小伝が置かれます。朝太郎については、私も山田風太郎の小説などで多少のことは知っているのですが、この小伝はそれらとさほど変わりはありません。
それが終わると、突如芥川龍之介の「本所兩國」の一部が引用されます。*1


さて、円朝倅朝太郎と芥川龍之介を結ぶものは何か。そして「夫婦幽霊」の真の作者は誰なのか。
それを知りたい方は、なにとぞ「円朝芝居噺 夫婦幽霊」をお求めください。

*1:この「東京日日新聞」に掲載された文章の、あったかも知れない取材風景は、久世光彦の「蕭々館日録」の第九章「大東京繁盛記」に書かれています。