旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

贋の記憶

昨日は七夕でしたが、私が小さなころには七夕飾りを隅田川に流したものでした。流す場所は、白鬚橋の真ん中あたりで、川下に向かって立つと、頭上にはいつも天の河が光り輝いていました。


頭上に輝く天の河、私は図工の時間にそんな絵を描いたこともありましたが、どうやらこれは贋の記憶のようなのです。
私の子供時代には、すでに東京では天の河を見ることができなくなっていたからです。それに天の河はうっすらと見えるもので、私の記憶にあるようなものとはだいぶ違っています。


では、なぜ私はそんな贋の記憶を持ったのでしょうか。いくつか思い当たることがあります。


まず、学習雑誌の影響が考えられます。そのような雑誌の7月号には、必ず七夕の記事がありました。そこには織り姫、彦星伝説のマンガや、天の河を解説した絵や写真が載っていました。挿絵の天の河は空一杯に広がり、金色に輝いていました。
また、「子供の科学」の天体写真は、大望遠鏡を使い長時間露出で撮影したようで、天の河を構成する星のひとつひとつまでもがはっきりと見えました。


もうひとつ、当時浅草の新世界の屋上にあったプラネタリウムで見た星空も関わっているはずです。
渋谷にあった五島プラネタリウムは有名でしたが、私は新世界のそれのほうが好きでした。小さくて、客もあまりいませんでしたが、解説がわかりやすく面白かったのです。それに、何よりも近くにあります。
また、オペレーターのお兄さんが上映が終わってからも、プラネタリウムの機械や、星にまつわるいろいろな話をしてくれたことも、印象をよくしていました。


それらのことがあって、無意識のうちに、私は記憶を美化していったのでしょう。もしかしたら、隅田川に七夕飾りを流したというのも、贋の記憶かも知れません。
一度でいいから、本物の天の河を見たいものです。