旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

大工調べ

小満ん師匠が昭和の名人たちの楽屋風景を語ったのを受けてでしょうか、三三さんのマクラは現在の初席の楽屋風景です。こういうところにも彼の才気が感じられます。
演目は「大工調べ」です。この噺、どうしても志ん朝さんを思いだしてしまうのですが、柳朝師匠の「大工調べ」を聞いておきたかったと、悔やむことしきりです。
私は、恥ずかしいことですが、柳朝師匠をずっと評価していませんでした。落語の登場人物が落語を演っているように思えたからです。
でもそんなことはありえませんし、よしんばそうであっても、それで悪いことはないのです。その気になればいつでもできたのに、私は柳朝師匠の高座を見ることがありませんでした。


「大工調べ」の聞きどころは棟梁の啖呵です。ことを穏便にすまそうと(それでも、ことばの端々に短慮な性格があらわれてしまうのですが)大家の源六さんの揚げ足取りにじっと耐えていた棟梁が、とうとう堪忍袋の緒が切れ毒づきます。柳朝師匠なら、棟梁が乗り移ったかのような啖呵が聞けたことでしょう。
ほとんどの「大工調べ」はここで終わります。「唐茄子屋政談」が「唐茄子屋」で終わるように。
志ん朝さんはその後のお白州の場まで演っていました。今回の三三さんもそうでした。
でもねえ、「大工調べ」のお奉行様は大岡越前ではなく無名の方ですが、人情味あふれるお裁きをしたいがために、なんだか納得のいかないお沙汰を言い渡しているような気がして仕方がないんです。