旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

ぼくは猫にもなれなかった。

「『山月記』の主人公は虎になってしまったけれど、あなたは何になるのかしら。猫?」
「みんなあなたが墓碑銘を書いてくれると思っているのよ。」


Tさんとの会話の中で、今でもはっきりと覚えているものを書き出してみました。でもこれを読む限り、彼女が鼻持ちならない女性に見えてくるような気がします。
話の流れを無視して、印象に残った部分だけを取り出したからかも知れませんが、それ以上に、実際の会話を採録しただけでは人に伝わる文にはならないからでしょう。文章にはやはりテクニックが必要です。


Tさん、どうやらぼくは猫にもなれなかったようです。もちろん、みんなの墓碑銘を記すことなどはできそうもありません。でも最近になって、自分の墓碑銘だけはなんとか書き上げようと考えるようになりました。
あなたがそばにいたころの、無責任で自意識の固まりみたいだった自分のことを、やっと見つめることができるようになってきたからです。「そんなの、あなたらしくないよ」と言われそうですが、あのころを美化したり、避けて通ることをさんざんしてきてこの体たらくがあるのですから、遅すぎる反省から始めなければなりません。
その上で、可能性としてあったものをもう一度探してみたい。それくらいの時間は、まだ残されているはずです。


昨日の便りを訂正します。
最後に会った日にTさんが着ていたのは、Tシャツではなくシャツブラウスでした。