旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

阿部薫のギター

フリージャズはよく聞いていた私ですが、夭折した阿部薫の演奏に接する機会は、残念ながらありませんでした。
生前、浅草のジャズ喫茶「フラミンゴ」でノイズミュージックの嚆矢、高柳昌行とのデュオライヴを収めたレコード「解体的交歓」を買ったことがありましたが、聞き通すことができないうちにどこかにいってしまいました。
今、私が持っている阿部のCDは5枚しかありません。10枚出された「阿部薫ソロ・ライヴ・アット・騒」の半分です。「騒(がや)」というライヴハウス(私は行ったことがありません)でラジカセに録音した演奏をCD化したものです。77年9月から翌年の8月にかけての演奏で、阿部は78年9月9日に逝去しました。
彼はアルトサック奏者でしたが、それ以外にもソプラニーノ、ハモニカ、ピアノ、ギターを演奏しました。「騒」のライヴでもそれらの楽器を聞くことができます。
このCDのライナーノートには、演奏の解説のほかに、阿部の知人たちによるエッセイが載せられています。友川かずき梅津和時などの豪華な執筆陣で、読み応えがあります。


騒恵美子(店のオーナーでしょうか?)が書いた第8巻のエッセイには、阿部薫のギターのことが書かれています。
演奏を終えた阿部に、ギターを演奏するという客が話しかけました。
「ギターを専門に勉強しているわけでもないのに(略)阿部薫という名前だけで、何をしても許されると思うと、モーレツに腹立つんですよネ。」
テクニックが必要だと言う客に、阿部は執拗に「テクニックとは何か」と問いかけます。客と阿部のことばは交わりません。じれた阿部は、店にあった「ボロのアコースティックギター」を客に突きつけ、弾けと命じます。客は拒否します。
やおら阿部は、そのギターを弾き始めました。確実なテクニックで弾かれたのは(なんと!)フラメンコでした。


ラストデイト

ラストデイト