旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

たまには異質の人と

三島由紀夫の文章と格闘しています。
彼の代表作は読んでいるつもりですが、手元にあるのは新潮文庫の「真夏の死」のみです。私には関心のない作家だったのです。
ただ、あの呉智英先生も賞賛する文学論は、いつかは読まなければと思っていました。で、やっと講談社文芸文庫の「三島由起夫文学論集」第1巻を買ってきました。このまま積ん読になっちゃうかな、という気もしたのですが、なぜかすぐに読み始めました。


文庫オリジナルではなく、70年に出版されたものの文庫化です。編者は虫明亜呂無。意外な感がします。私が知る虫明はスポーツ小説や評論を書く作家だからです。
初めて接した虫明の文章は、新聞に連載されたスポーツ小説でした。挿絵は宇野亜喜良だったでしょうか。
小説の内容より、虫明亜呂無という一風変わった名前と、扇情的な挿絵に目が奪われました。亜呂無だってさ、アトムのもじりかね、なんて馬鹿にしたものです。
(いけない、話がそれちゃった。)


冒頭はあの「太陽と鉄」です。これは小説みたいな作品だから、後まわしにしましょう。
その後に日記体の文章「小説家の休暇」が続きます。これなら読めそうです。文体も小説とはだいぶ違っています。
太宰治を嫌悪する理由を三島は次のように書いていました。

私とて、作家にとっては、弱点だけが最大の強みとなることぐらい知っている。しかし弱点をそのまま強みにもってゆこうとする操作は、私には自己欺瞞に思われる。どうにもならない自分を信じるということは、あらゆる点で、人間として僭越なことだ。ましてそれを人に押しつけるにいたっては!


ぐさっとささる文章です。三島は太宰の本質をつかんだうえで、投げ捨てるのです。
なかなか読む進めることができない本ですが、私とは異質な人である三島のことばに、謙虚に接していくことにします。


三島由紀夫文学論集 I (講談社文芸文庫)

三島由紀夫文学論集 I (講談社文芸文庫)