旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

ピレシュのショパン

ドイツ・グラモフォンの創立111周年を記念したボックス・セットに入っていたマリア・ジョアン・ピレシュショパンノクターン集がとてもよかったので、昨年録音された後期作品集を買いました。


ピレシュの30年来のファンと騒いでいるくせに、なぜか彼女の弾くショパンは遠ざけていました。ピレシュがデンオンからモーツァルトソナタ全曲を出していたころに聞いたアンヌ・ケフェレックのショパンがとてもよかったからなのかもしれません。ショパンはケフェレックに限る、なんてね。
ミーハーな私は、デンオンのジャケットの写真でピレシュのファンになりました。セシール・カットがとても似合っていたからです。ケフェレックもすてきな女性ですが、長い髪が女性ピアノ奏者としてありきたりに見え、演奏だけが好きになりました(それでいいんじゃないの、女優じゃないんだから)。


ケフェレックの演奏で一番印象の残ったのが作品64−2のワルツでした。聞いた瞬間に胸がキューンとしてしまいました。これは恋人との出会いと別れだな、と感じられたのです。
このキューン感は、その後たくさんの演奏を聞きましたが、再現されることはありませんでした。
だから、ショパンはケフェレック。


このワルツはピレシュのCDにも収録されていました。作品集の全曲がややゆっくりめに演奏されているのですが、それがこのワルツに深い陰影を与え、出会いと別れだけではないものが伝わってきました。
もちろん、それ以外の曲もすばらしい。ショパンってこんなふうにも弾けるんですね。


グラモフォンに移籍してからのピレシュの作品にハズレなしです。
エラート時代は、復帰したばかりのせいか、魅力ある演奏がないのです。それに、あのころは髪を長くしていましたし‥‥。
ピレシュはセシール・カットに限る、です。


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