久しぶりに枝雀さんの「替り目」をCDで聞きました。94年8月、大阪サンケイホールでの録音です。
「替り目」といえば志ん生といわれています。多くの人が、苦労をかけたりん夫人との生活の一齣がうかがえるような私落語と評しています。
枝雀さんの「替り目」も私落語なのでは、と今回聞いてそう思いました。女房におでんを買いに行かせてからの、聞かせどころの部分です。
ここで、本人の前では口が裂けてもいえない、女房に対する感謝の気持ちをしみじみと語るのですが、枝雀さんは「こんな自分を支えてくれるのはあいつだけだ」の「こんな自分」を、リアルに描いてみせるのです。
では、どんな「自分」なのでしょうか。
生真面目で、行き詰まったときには別な道をさがせばいいのにそれができず、ついにはコトッと落ち込んでしまう自分です。
これは、鬱状態のときの枝雀さんそのものではないでしょうか。
枝雀さんは主人公を松本留五郎としています。枝雀ファンにはおなじみの、あの松本留五郎さんです。
すると、「代書屋」や「茶漬えんま」の留さんには、躁状態の枝雀さんが反映されているのでしょうか。
なお、ちくま文庫の「桂枝雀爆笑コレクション1 スビバセンね」に収録されている「替り目」には、この部分はありません。
- アーティスト: 桂枝雀
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 1995/05/24
- メディア: CD
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