旭亭だより

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「競売ナンバー49の叫び」再読

急にトマス・ピンチョンの小説が読みたくなり、一日で読める「競売ナンバー49の叫び」を再読しました。最近出た新訳の新潮社版ではなく、ちくま文庫にも収録されている志村正雄訳のものです。
私が読んだのは92年11月に筑摩書房から出たハードカバーで、出版と同時に購入し、積ん読にはまわさず、すぐに完読した記憶があります。はじめて手にしたピンチョンの小説でした。


このハードカバーの装丁が気に入っています。カバーにはざらっとした感触の、漂白していないような色の用紙が用いられています。それを外すとあらわれる表紙は、つるっとした赤の地に、金属風の虹色でサイレンサー付の郵便喇叭(この作品のシンボルです)が描かれていて、実にカッコいいのです。中身を知らなくても、ジャケ買いをしてしまいそうな本です。
さらに、本文に登場するスペイン生まれのシュールレアリストの女性画家、レメディオス・バロの作品「大地のマントを織りつむぐ」も精緻な印刷で本文の前に折りこまれているのです。2600円は高くなかったな。


奥付には装丁ではなく、造本者・木庭貴信と記されています。もちろん写植印刷ですが、奥付は古い活字印刷のような雰囲気があります。