旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

小説を読む。

先日、急に小説らしい小説が読みたくなり、古井由吉の「槿」を書棚から引っぱりだしました。私にとって、小説らしい小説とは「文」が味わえる作品を指します。
ところが、主人公の杉尾が女性を背負って歩くという冒頭近くでそれ以上読めなくなってしまいました。献血センターで偶然に出会ったその女性が杳子と重なり、「杳子」(古井の芥川賞受賞作品)を読んだ十代のころがしきりに思いだされてきたからです。
古井の小説に入りこむのは容易ではなく、そのとっかかりを掴んだところだったのですが、本を置きました。


なにか別なものを、と考える間もなく、金井美恵子の名が浮かび、「小春日和 インディアン・サマー」を読み始めました。
現在の私の周囲にはひとりもいないタイプの人たちしか登場しないこの「少女小説」は、つるっと私の中にすべりこみ、暖かく懐かしい、ちょうどタイトルのような時間を過ごさせてくれました。