旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

「うるわしき日々」から「抱擁家族」へ

出張の新幹線の中で読んでいた本の一冊が、小島信夫の「うるわしき日々」(講談社文芸文庫)でした。それとは知らずに読みはじめたのですが、「抱擁家族」の後日譚です。
小島信夫の小説を、ストーリーに沿ってのみ読むのはいけないとわかっているのですが、内容が内容だけ一度目はそのまま読むことにしました。
抱擁家族」で妻時子(「うるわしき日々」ではトキ子)を喪った主人公、三輪俊介は再婚し、八十過ぎの老人になっています。あの小説で高校生だった息子良一は五十五歳になり、アルコール依存症の末期症状、コルサコフ氏病で痴呆が進行中です。また、三輪の再婚相手であるテル子にも記憶障害がおきているようなのです。
住んでいる家は以前と同じ欠陥だらけのあのモダン建築で、それと折りあいをつけていく過程も回想されています。
抱擁家族」を読んだのは三十年以上前で、読みずらかった印象が強烈に残っています。今また読み返しているのですが、齢を重ねたせいかそのようなことはありません。ただ、当時は知らなかったのですが、私小説的な面もあったことに驚いています。それは「うるわしき日々」も同じです。
この後、もう少し小島の他の作品に触れてから、再度この二冊を現代の小説として読んでみるつもりです。


うるわしき日々 (講談社文芸文庫)

うるわしき日々 (講談社文芸文庫)