旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

やっと須賀敦子を読んでいます。

出す本すべての評判がよく、須賀敦子のことは生前から気になっていました。しかし、海外生活の長い大学教授と云うことで、著作を手にすることはありませんでした。どちらも私には無縁なので、それだけで遠ざけてしまったのです。心の狭い人間です。
ところが、どうしたことか八年前に全集の文庫版が出ると、毎月買い求めました。ハードカバーと同じ、とてもきれいな装丁で、値段が手頃だったこともありますが、やはりどこかで気に留めていたのでしょう。それでも、ずっと放りっぱなしでした。
最初に読んだのは「コルシア書店の仲間たち」でした。これも「コルシカ書店」と覚えていたのです。なんでイタリアなのにコルシカなのかなんて、疑問も抱かずに。
観光案内風の記述が一カ所もないことに、まず驚きました。「仲間たち」とそれを取り巻く人たちと彼女のつきあいには、お互いに異国人であると云う隙間がまるでないことにも感心しました。須賀敦子が、イタリアで生まれイタリアで育った人にように思えてくるのです。まさか日本の大学院を中退し、最初はフランスに留学したとは……。
これを先に読んだことが、かえってデビュー作である「ミラノ 霧の風景」の理解を深めてくれました。逆でしたら、たぶん一冊も読み終えられなかったでしょう。
先週、近くの書店でDVDブック「須賀敦子 静かなる魂の旅」(河出書房新社)を見つけ、高い本でしたが買ってしまいました。四年前出たものが版を重ねていたのです。テレビマンユニオンが制作したもので、テレビ朝日で放映されたそうです。
先月、松山巌が「須賀敦子の方へ」(新潮社)を出版しました。著書が好きでも著者に関心を持つことの少ない私ですが、読みたくなっています。


須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫)

須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫)