旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

耳に胼胝

最も使う辞書は漢和辞典です。『新漢語林』(大修館書店)がいつも机の上に置いてあります。『新明解現代漢和辞典』(三省堂)と『新潮日本語漢字辞典』(新潮社)も手の届く範囲にあります。国語辞典と英和辞典は電子辞書でも引きますが、漢和辞典は紙の辞書一筋です。
宮部みゆきの『泣き童子(わらし) 三島屋変調百物語参之続』(角川文庫)を読んでいたら初めて見る漢語に出会いました。「胼胝」です。ヘンチと読みます。意味は「ひび。あかぎれ。また、たこ、まめ」。
この本には、さほど難しくない漢字にもルビがふってあります。でもこれはルビなしでした。この熟語は地の文ではなく会話の中に出てきました。語るのは白粉問屋の主です。
「いえ、今日は家内がおらん方がよござんす。あれの耳の胼胝を休ませてやらんと」(65頁)
ああ、これは耳タコを指すんだな。ルビをふるなら「へんち」ではなく「たこ」です。宮部さんはたぶんそうふっていたはずです。