旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

カモメの町

森まゆみの『鴎外の坂』(ちくま文庫)で、森林太郎の号「鴎外」は橋場の渡しにちなんでいることを知りました。橋場の渡しの通称は鴎の渡しで、少年時代に向島に住んでいた森はこの渡しを利用したことがあるのです。私は浅草橋場町で育ちました。白鬚橋ができていましたから渡しはありませんが、私の家から二、三分のところにそれはあったはずです。
白鬚橋のたもとには「明治天皇行幸対鴎荘遺跡碑」がありました。三条実美の別荘があった場所で、明治天皇1873年に実美の病気見舞いに対鴎荘を訪れました。森が津和野から上京したのはこの翌年です。彼が向島の小梅村に住んだのは数ヶ月で、本郷の壱岐坂にあったドイツ語を教える進文学社で学ぶために神田小川町西周(にしあまね)邸に移りました。
私の通った高校の名称にも鴎の字が使われています。