旭亭だより

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久世光彦『蕭々館日録』

久世光彦(くぜてるひこ)の熱心な読者ではありませんが、『蕭々館日録』(中公文庫)だけは何度も読み返しています。また読んでしまいました。
蕭々館の主、児島蕭々は小島政二郎がモデルです。日録はその娘、麗子の視点で書かれています。大正の末年に始まり、蕭々館に出入りしている作家の九鬼さん(芥川龍之介)が死んだ日に終わります。
麗子は五歳で、同名の岸田劉生の娘に似せた着物を着せられています。本人もそれが気に入っているようです。
蕭々館は本郷区弥生町にあります。私は小島政二郎が蕭々の号を用いたかは知りません。作中の児島は私淑していた永井荷風の『雨蕭蕭』からその号を付けたことになっています。児島はその後、荷風を嫌うようになります。
弥生町には知り合いが住んでいて、何度か行ったことがあります。半世紀以上前の話ですが。
読めば芥川が読みたくなるのはいつものことです。また寄り道をしそうです。

 

蕭々館日録 (中公文庫)

蕭々館日録 (中公文庫)