旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

中野重治と大西巨人

松下裕(まつしたゆたか)著『[増訂]評伝中野重治』(平凡社ライブラリー/2011年)は読了後も折に触れ目を通す本です。中野重治は私にとって、鶴見俊輔とともに若い頃からもっと多くの作品を読むべきであったとの悔いを残させる著述家です。が、中野と鶴見を並べて考えることはありませんでした。中野と並べていたのは大西巨人です。
中野は1902年、大西は1916年生まれで、世代は違いますが、ともに日本共産党新日本文学会に所属していたことでそう考えたのでしょう。中野は日本共産党から1964年に除名され(二度目!)、大西は除名はされなかったのですが1961年から同党と「事実上の絶縁状態にな」(講談社文芸文庫版『地獄変装奏鳴曲 第四楽章』所収の自筆年譜による)っていました。
私は、大西の作品は『神聖喜劇』ではなく、『戦争と性と革命』(三省堂/1969年)から始め、寡作なためにほぼすべての著作を上梓と同時に読み進めることができました。中野だけでなく、花田清輝も併せて読んでいればと、これもまた悔やんでいます。