旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

柳田國男「神道私見」

柳田國男全集 13』(ちくま文庫/1990年)に収録されている「神道私見」で新たな知見を得ました。
「大正二年の六月、内務省はその神社局を自分の方に保留して宗教局だけを文部省に移管しました。宗教局においては仏教・基督教とともに、今日のいわゆる神道各派の事務を管轄することになり、一方には無格社以上のいっさいの神社に関する事務は神社局で監督することになりました。」(589頁)
神社非宗教論はこんなところにもあらわれてきたのです。柳田はこれを懸念しました。
「この神社(出雲大社 - 引用者註)を挟んで千家・北島の両男爵家が、一方は大社教会、一方は出雲教会という名前で、あの狭い杵築の地に神道の二派を立てておりまして一方の千家氏は兼ねて宮司を勤めておられる。すなわち宮司の身分をもって一の神道教会の頭をしておられるのであります。しかし学問のある人ならばその区分を了解しましょうが、日々参拝する地方人は(略)果たして弁別してあるくことができましょうか。」(589-590頁)
富岡多惠子著『釋迢空ノート』を読みながら『柳田國男全集』にも手を伸ばしました。折口、柳田の著作は私には取り留めがないように思え、いくら読めども手の内から逃げていくものでした。この歳になって、やっと取っ掛かりが見えてきたようなのですが、それは気休めなのかもしれません。