旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

『明暗』とアヴァンギャルド

津田は清子と会うために湯河原温泉に赴きますが、その前に職を求めて朝鮮に行く友人、小林のための送別会のシーンが置かれています。そこは金を無心された津田が小林にそれを渡す場でもあります。二人の食事がすむ頃に、小林が津田には告げずに呼んであった画家、原が現れます。津田は彼と面識がありません。
「二人は津田を差し置いて、しきりに絵画の話をした。時々耳にする三角派とか未来派とかいふ奇怪な名称の外に、彼は今迄曾て聴いた事のないやうな片仮名をいくつとなく聴かされた。」
三角派とは立体派のことです。小林と原はパリのアヴァンギャルド絵画について話しているのです。『明暗』は大正5年(1916年)に書かれました。翌年にはロシア革命二月革命十月革命)が起こります。
なんだかトロツキーの『ロシア革命史』が読めそうに思えてきました。漱石の方は『坊っちやん』の予定です。