旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

トマス・ピンチョン

志村正雄訳『競売ナンバー49の叫び』(筑摩書房/1992年)は初めて読んだピンチョンの作品です。あれから30年以上経ったのか。今回は三度目でしたが、これまでどこを読んできたのか、まったく違う小説に思えました。リチャード・パワーズの『舞踏会へ向かう三人の農夫』のときと同じです。老いもありますが、ストーリーだけを追いかける読み方をしていたのが一番の原因でしょう。読みながら、次は『ヴァインランド』にしようと決めました。佐藤良明訳『ヴァインランド』(河出書房新社/2009年)は『競売ナンバー49の叫び』とかすかに触れあう作品でもあるからです。
訳文の違いに驚いています。フォークナーは誰の翻訳でも読みづらく、たぶん原文がそうなのでしょう。ピンチョンは作品によって文体を変えるのかもしれません。
『ヴァインランド』のやり方で、日本の同時代を描く小説を希求してやみません。