旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

雪沼と未見坂

GWの初日は、例年の如く本を読んで過ごしました。やっと日常が戻ってきたともいえるわけですから、まあこれでよかったのでしょう。
読んだのは今月新潮文庫に加わった堀江敏幸の「未見坂」でした。
新潮文庫の堀江作品のカバーは、どれも古びたような木の模型を上半分にあしらってあるのですが、今回はこの連作短編集の第一話「滑走路へ」に登場するセスナが、いい感じを出しています。


未見坂のある架空の町は、新潮文庫の既刊「雪沼とその周辺」の町の近くにあるようなのですが、時間が流れたせいもあってか、ふたつの町の肌合はずいぶんと違っています。
夫婦間の問題で、母親の実家にしばし預けられる小学生が何人も登場しますが、そのようなことは「雪沼とその周辺」ではありませんでした。
この子たちを、祖母や伯父のいるこの町はやさしく迎えてくれます。そんなことは現代ではありえないと思う人には、これら架空の町だけでなく、堀江の描く王子駅の周辺も無縁のものでしょう。


現代の小説のほとんどを震災後に捨ててしまった私ですが、堀江の作品はすべて残してあります。


未見坂 (新潮文庫)

未見坂 (新潮文庫)