旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

フォギー、それは弟の方だよ。

「鳥類学者のファンタジア」

奥泉光「鳥類学者のファンタジア」を読みました。これもまた「書評家<狐>の読書遺産」で紹介されていた本です。


約750ページの大作(集英社文庫版)でしたが、あっという間に読み終えてしまいました。奥泉の作品はだいぶ前に「『吾輩は猫である』殺人事件」を読んだだけですが、それよりもずっと楽しめました。「『吾輩は猫である』殺人事件」は「吾輩は猫である」である(変な言い方ですね)必然性がない、と私は考えるからです。


ただ、内容とは関係ないのですが、330ページの主人公フォギーの発言は間違っています。
「(バド・パウエルが加わった−引用者注)マックス・ローチクリフォード・ブラウンと一緒のクインテットは、本当にすごいんですのよ」と彼女は言いますが、ローチ&ブラウン・クインテットのピアニストはバドではなく、彼の弟のリッチーです。
この間違いが何かの伏線になっているのかも知れないと最後まで注意して読みましたが、それはありませんでした。そうなると、デビューしたてのころはバド・パウエルに近いスタイルで演奏し、「おんなバッパー」との異名をとっていたフォギーにあるまじき発言です。それは単に知識の上でのことではなく、パウエル兄弟の演奏スタイルは、はっきりと異なっているからです。


バド・パウエルマックス・ローチクリフォード・ブラウンではありませんが、やはり夭折した天才トランペット奏者と名演を残しています。ブラウニーがお手本としたファッツ・ナヴァロです。


巻末の解説は山下洋輔が書いていますが、彼もそのことに触れていませんので、お節介とは思いましたが記しておくことにしました。