旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

シミキン

「あちゃらかぱいッ」の本編は名前を残すことがなかった<あちゃらか>芸人列伝ですが、この本には彼らとは別格だった浅草の帝王シミキン(清水金一)を描いた「浅草葬送譜」も収められています。執筆は「あちゃらかぱいッ」の前になります。


私はシミキンという人がどんな存在なのか、ずっとわからないでいました。同時代に活躍したエノケンはその後も長く活動を続け、残された戦前の映画でも若き日の舞台の様子の一端は想像できましたし、ロッパは膨大な日記を残しています。*1
シミキンも映画に進出しましたが、失敗しました。「浅草葬送譜」を読んでやっと彼の舞台の魅力や、映画で成功しなかったわけがわかったような気がします。
よく脱線する芝居、その後の「皆々さまよ―」で始まるまとまりのつかない長口舌、シミキンを見に来た人たちは彼の底抜けに明るい芸風だけではなく、こんな破天荒なところも愛していたのでしょう。なんだか彼の舞台姿が見えてくるようです。


色川武大は昭和4年(1929年)の生まれです。大正15年(1926年)、台東区に生まれ育った私の父もシミキンの舞台を見ていたはずです。父が生きていたら<あちゃらか>やシミキンの話を聞けたのですが、一度も酒を酌み交わすことがなかったこととともに、かえすがえすも残念に思います。

*1:古川ロッパ昭和日記」が再刊されました。まだ買ってはいませんが全巻そろえるつもりです。