旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

「とても」と「全然」

芥川龍之介は『澄江堂雑記』で副詞「とても」について次のように書いてます。
「「とても安い」とか「とても寒い」と云ふ「とても」の東京の言葉になり出したのは数年以前のことである。勿論「とても」と云ふ言葉は東京にも全然なかった訣(わけ)ではない。が従来の用法は「とてもかなはない」とか「とても纏まらない」とか云ふやうに必ず否定を伴つてゐる。」(二十三 「とても」)
そしてこれは「三河の国あたりの方言であらう」とし、用例として『猿蓑』の「秋風やとても芒はうごくはず 三河、子尹(しいん)」を挙げています。この文章が書かれたのは大正中期です。
私は「とても」の「肯定に伴ふ」用法を何の疑問も抱かずに使っています。しかし引用にある「全然」は、現在では肯定的にも使われていますが、これには違和感を覚えますので口にすることはありません。