旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

バッタもんは江戸時代から

正規の流通ルートを通さない商品や値崩れ品をバッタもんと言いますが、私はそう古くない香具師(やし)の隠語と思ってきました。
ところが鶴屋南北東海道四谷怪談』(岩波文庫)の四幕目に「ばつたにうつて」という直助権兵衛の台詞がありました(175頁)。語釈は「ばつたにうる=ばったりまとめて處分する」となっています。バッタもんもそのように売られているものでしょう。
三幕目「砂村隠亡堀の場」で、鰻掻き直助権兵衛は堀から鼈甲の櫛を引き上げます。家に返り、同棲しているお袖にそれを見せると、それは姉、お岩の「ひぞう〔祕蔵〕なさんした」ものだと、質入れを反対されます。その時の独り言が「こいつ質にやるより、いつそのくされ大家のかみさんを、だまくらかして、ばつたにうつてしまうわえ」です。
直助は以前、藤八五文という路上の薬売りをしていました。香具師だったのです。