旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

【橋場噺】提灯行列お盆の仕度

東京のお盆は7月ですが、今日は子供のころのお盆の話を少々。


お盆の頃になりますと日も長いので、子供たちは夜になっても外で遊んでいました。縁台将棋なんかもやっていましたが、楽しかったのは提灯行列です。
誰が言うともなく暗くなると三々五々子供たちが集まってきます。みんな手には提灯をぶら下げていますが、ほとんどが空き缶で作った手作りのものです。駄菓子屋ではお盆目当てのピンクのグラデーションの安い提灯を売っていましたが、これを持ってくる子はほとんどいません。


提灯は缶詰の空き缶で作ります。中にロウソクを立てますのでパイナップル缶のような大きなものを使います。
まずラベルを外します。水に浸けておくとぺろっときれいに剥がれます。そしてこれからが腕の見せどころです。缶に釘で沢山の穴を空けて模様を作るのです。
最初は底です。放射状に穴を空けるのが定番ですが、きれいに空けるのは結構むずかしいものです。曲がらないように丁寧に空けていきます。
さて次は側面ですが、その前にロウソクを立てる位置を決めます。短い釘を打ってロウソク立てにするのですがそれは最後です。位置決めができたなら小さな穴を打っておきます。その反対側に把手を付けるための穴も空けておきます。把手は針金ですが、これを付けるのも後回しです。


これでどこが側面になるのかが決まりました。後はそこに好みの模様を空けていけばいいのですが、これが大変です。なにせ相手は円筒です。それに定番の模様がないので自分で模様を考えなければなりません。
結局不器用な私などは、わけのわからない模様以前の穴を空けておしまいです。もちろん、自分の名前や富士山などをきれいに空ける子もいます。そう言えば蒸気機関車のすてきな模様がついた提灯を持っている子がいました。おそらく、ブリキ職人だった彼の父親が空けてくれたのでしょう。
最後に把手を付け、釘を打って完成です。提灯を作るのは日中ですが、早速ロウソクを立てて火をつけてみます。夜が待ちきれないのです。


そんなふうにして作った手作りの提灯に火を灯して子供たちは集まってくるのです。そして「提灯行列お盆の仕度」と唱えながら、町内のなるべく暗いところを探して、子供たちだけで怖い話をしながら1時間ほどぶらぶらと歩き回るのです。