旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

旭亭心中

近松浄瑠璃の世界でしか知らない「心中」ですが、心中しない心中の夢を見ました。なんて書くと「そりゃ、とんだ品川心中だね」と言われそうです。
相手の女性は、いかにも心中に見合った(?)あだな年増ざんしたが、見知らぬご婦人でした。


檜造りの立派なお屋敷の玄関に入ると、その女性が迎えてくれました。白い襦袢姿です。そして一言。
「死にませう。」
私はそれを黙って受け入れます。運命(さだめ)だからどうしようもない、そんな感じです。
彼女は池のある中庭に面した部屋に私を案内してくれました。そして、私は隣の部屋で命を絶ちます、と眼で合図をし、襖を閉めました。短刀を胸元に隠しているようです。
白の死に装束、懐剣といった時代劇のような道具立てでありながら、ヤクザ映画を見ているような気がしてなりません。彼女が藤純子江波杏子に似ていたわけではないのですが……。


ここまではそれなりに厳粛な雰囲気が漂っていたのですが、突如ずっこけます。
旅館のおかみのような和服の女性が現れ「今日は忘年会でしたよね」と大きな声で話しかけてきました。
「みなさん、お見えになりました。」
その後ろには、十数名の男女が並んでいました。よく見るとさきほどの女性も、鴇色の着物姿でその中にいるではありませんか。
どうやら座興だったようです。


それ以外にも何人かの人が登場し、実際にはすんなりとオチにはならなかったのですが、そちらの物語はもう思いだせません。