旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

フイチンさん

少年向けのマンガ月刊誌を読んで育った私ですが、マンガは手当たり次第に読んでいましたので、少女向けの月刊誌にも目を通していました。でも少年誌掲載のマンガと違って、今でも記憶に残っているものはほんのわずかです。
山田えいじ「ペスよおをふれ」と上田トシコ「フイチンさん」がその代表で、それぞれ「なかよし」と「少女クラブ」に掲載されていました。「ペスよおをふれ」がそうであるように、当時の少女マンガには男性作家の手になるものが多かったようです。


ここ数日、「フイチンさん」が思いだされてなりません。上田トシコの絵が大好きだったのです。(イラストレーターの上田三根子のタッチに上田トシコを感じ、縁戚にあたるのかもと思ったのですが、違うようです。)


「フイチンさん」て、今考えると不思議なマンガです。「フイチンさんと私」といった視点で描かれるのが、題材からいって妥当と思われるのですが、そうはなっていないのです。ハルピンに暮らす少女、ワン・フイチンさんが主人公で、日本人も出てきますが重要な役どころは与えられてしません。上田トシコの視線はフイチンさんの視線とぴったり重なっているのです。
「フイチンさん」の復刻本は現在すべて絶版で、手許にはありません。ストーリーはほとんど覚えていませんので、これ以上の感想は今はありません。


上田トシコは28歳で引き揚げてくるまで、東京の高等女学校に3年間通った以外はハルピンが生活の場でした。専売品協同組合の理事長であった父親は、戦犯として処刑されました。