旭亭だより

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細木香以

芥川龍之介の小説『孤独地獄』は「この話を自分は母から聞いた。母はそれを自分の大叔父から聞いたと云つてゐる。」と始まります。この大叔父は「姓は細木、名は藤次郎、俳名は香以、俗称は山城河岸の津藤と云つた男」です。森鴎外の、たぶん最後の史伝となった、『細木香以』に描かれた人です。
『細木香以』は異色の史伝でした。それまで取り上げた人たちとまったく違っていたのです。細木は市井の好事家でした。芥川はこう書いています。
「大叔父は所謂大通の一人で、幕末の芸人や文人の間に知己の数が多かつた。(略)中でも黙阿弥は「江戸桜清水清玄」で紀国屋文左衛門を買くのに、この大叔父を粉本にした。」
芥川は鴎外の『細木香以』については触れていません。『孤独地獄』の主人公は、細木が吉原で知りあった禅超という僧侶なのです。
『細木香以』には細木が芥川の親族であることが書かれていたような気がしますが、うろ覚えです。