旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

新聞小説

購読している東京新聞の連載小説は、私の楽しみのひとつです。朝刊は平野啓一郎の『本心』、近未来が舞台です。となると、描かれるのはデストピアとなります。
昨日の記述に深く胸に落ちるところがありました。主人公の青年が老人からある仕事を依頼されます。承諾した彼の感慨です。
「死が近づくと、人の思念の中では、過去の川が、一筋の流れであることを止(や)めて、氾濫してしまうのかもしれない。堰を切ったように、誕生から現在までの存在の全体が、体の中に満ちて来る。肉体には、その隅々に至るまで、懐かしさの気配が立ち籠める。」
死はまだ少し先と思っていますが、私にもこのような思いがあります。違うのは、「立ち籠める」のが「懐かしさ」ではなく「悔い」であることです。