旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

足の速い文庫本

辻原登「遊動亭円木」

昨日、文庫本を13冊買ったと記しましたが、14冊の間違いでした。でも、サッカリーの「虚栄の市」は全4巻ですから11冊と言った方がいいかもしれません。


「虚栄の市」と書いたところで本好きの方にはもうネタばれしていますね。そうです、昨日の買い物は山村修さんの「書評家<狐>の読書遺産」で取り上げている本を中心としたものでした。
11冊のうち、あの本で紹介されていないのはわずかに2冊。1冊は山村さん自身の「水曜日は狐の書評」、もう1冊は田村泰次郎肉体の悪魔/失われた男」です。後者は彼が存命していたら、きっと「文庫本を求めて」で取り上げていたはずです。


「書評家<狐>の読書遺産」で紹介された文庫本は全部で68冊です。私はその中から関心を持った約40冊をメモし、うち16冊に赤丸を付けておきました。まずこれだけは手に入れよう、ということです。
この本のもととなった「文庫本を求めて」は「文學界」2003年8月号から連載が始まりましたので、紹介された本はたやすく手にはいると思っていましたが、これが大間違いでした。赤丸を付けたもので手に入れることができたのはわずかに6冊で、それ以外もおよそ半分くらいしか見つかりませんでした。


地味な文庫本が増刷されないことには気がついていましたが、ここまでだとは思いませんでした。
もちろん私と同じように、山村さんの本を読んでそれらの本を求めた人が多いのでしょうが、今までの経験から言って、昨日見つからなかった本を手にするのはなかなか困難なはずです。古書店をこまめに廻るしかありません。


でも、一番読みたかった本は買うことができました。辻原登「遊動亭円木」です。「翔べ麒麟」で芥川賞を受賞したこの作家の名前さえ知らなかった私ですから、山村さんの本がなかったら手にすることはなかったでしょう。
「遊動亭円木」、面白いです。山村さんの書評を引いておきます。

辻原登の短篇連作集『遊動亭円木』を読むのなら、たそがれどきがいい。うすやみがひろがって昼の光をのみこみはじめる時分になると、人情噺めいたほのあたたかい情調と、それこそ板子一枚下のひいやりした怖さとが、こもごも身に沁みてくる。それが、いい。