旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

あの時代だから

佐野眞一「阿片王」を読みましたが、里見甫という人物がどうしても私の中で像を結びません。青木冨美子氏の「三七一」の読後とはまったく違っていました。
里見にはまだ隠された部分があるのではないか、と考えるからではありません。ただ、こんな人がいたことが、私にはわからないのです。


主人公である里見よりも、彼の周囲の人たちが私には強烈な印象を残しました。とくに、梅村うたとその養女である梅村淳には圧倒されました。佐野氏の関心は、執筆を続けるうちに、このふたりに移ったのではないかと思えるほどです。


戦争が彼女たちにあのような凄まじい生き方をさせたはずです。外地から帰ってきた人たちの、私にはとても理解できない生き方を、いくつか聞いたことがあるからです。それは、その人たちが話してくれた戦争体験よりもはるかに驚くことでした。
彼(彼女)たちの戦後の生き方が、戦争を体験した人たちに共通してあらわれるものなのでしょうか。それとも、それはこの国の戦後に固有のものなのでしょうか。
なんとかそれを知りたいものです。