2月26日にインクスという会社が倒産しました。ATCより規模がずっと大きい会社ですが(なにせ本社が丸の内にあります)、同業者といえます。一時期、新聞やテレビで取り上げられ、その技術が賞賛されていましたので、名前に聞き覚えがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私はインクスを訪問したことはありませんし、社員とも会ったことがありません。ただ、比較され、馬鹿にされたことは多々ありました。インクスを取り上げた記事やテレビ番組を見た人たちから、ATCに独自技術がないことを非難されたのです。
テレビ番組は見ませんでしたが、朝日新聞のビジネス面2頁を使った提灯持ち記事(広告ではありません!)を読んだことがありました。インクスではCADやCAMまでもが自社製で、独自の技術で設計から金型作成までも、従来の十分の一で請け負うというのです。
半ページを使って、驚くほどきれいなオフィスで、社員と並ぶ得意満面な山田社長の写真が掲載されていました。ペーパーレスで作業をしているということで、ディスクの上にはモニターとキーボード、そしてマウスしかありません。
それを見た瞬間、これは嘘だ、と感じました。どれだけインクスの技術が高かろうと、こんな場から物が作れるわけがありません。それに、社員たちが高級そうなスーツを着ているのも、私には気に入りません。
これは明らかに職場でのスナップ写真ではなくて、宣伝媒体用のフォトセッションです。そして、こんなことをする会社にはもっと大きな嘘があるはずです。
インクス発表の文章には自動車産業の不況により、業績に重大な影響が生じたと書かれていました。倒産するのは顧客のせいだ、といわんばかりで、経営者の責任については一切ふれていません。そうそう、「ものづくり」ということばも、しっかり使われていましたよ。
資金繰りに破綻が生じる前に、自主的に民事再生手続の申し立てをしたとのことですから、インクスさん、一日も早く業界の覇者として返り咲いてくださいね。