旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

ホロビノ姿

昨年から歴史書を、とりわけ通史を読むようにこころがけています。そんなときに、講談社学術文庫で同社による「日本の歴史」全26巻の刊行がはじまりました。こういった大部のものが文庫で出てくれるのは大歓迎です(ちょっとお値段がかわいくないけどね)。
同書は刊行開始時に遺跡捏造事件があり、第1巻「縄文の生活誌」の訂正版が2年後に出されたことで話題となりました。
また、小学館でも現在、創立85周年記念出版として全16巻の「日本の歴史」を刊行中です。こちらは近世の巻だけ揃えました。


さて学術文庫版は第9巻「頼朝の天下草創」が出て中世に入りました。早速手にしたのですが、前書きを読んで頁を繰る手がとまりました。「ちょっと違うんじゃないかい。」


冒頭に太宰治の小説「右大臣実朝」のあの有名な実朝のことば「平家ハ、アカルイ」「アカルサハ、ホロビノ姿デアロウカ。人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ」を引用し、著者山本幸司は太宰がこの小説を書いた昭和17年は明るさの対極にある時代であったと書いているのです。
でも、そうであるならばその時代は滅びないのです。戦後生まれは戦中を暗い時代と簡単に決めつけがちですが、実際はそうではなかったことを多くの人が書き残しています。
太宰は人々の心がひとつになり、犯罪も減った「アカルイ」戦争期にこそ「ホロビノ姿」を見ていたのです。


はじめの頁で躓いてしまい、本文はまだ1行も読んでいません。


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