久しぶりにNHK−BSで山中貞雄の遺作「人情紙風船」を見ました。
河竹黙阿弥の「梅雨小袖昔八丈(髪結新三)」を下敷きにした作品で、前進座のメンバーが総出演しています。実写版「髪結新三」ともいえますが、黙阿弥の戯曲にはなかった浪人夫婦の物語が付け加えられています。
浪人を演じているのは河原崎長一郎ですから、こちらのストーリーにも新三の強請(ゆすり)と同じくらいの比重が置かれています。いや、それ以上でしょう。この映画のタイトル「人情紙風船」は心中してしまうこの夫婦にこそ似合うものだからです。
「髪結新三」は実話をもとにしています。三遊亭圓生の演目でもありましたが、実際の事件を取りあげたのは落語の方が早かったそうです。
当初の落語では大岡政談ものになっていました。これはこの事件を裁いたのが実在の大岡忠相だったからです。
圓生はその噺を復活させたのではなく、歌舞伎とほぼ同じ内容を語りました。また新三の悲惨な最後までは語らず、大家にまんまとやられる新三の苦笑で幕にしていました。
「人情紙風船」で新三を演じたのは中村翫右衛門です。うまいのかどうか、私にはわかりません。
当時前進座に在籍していた加藤大介が弥太五郎源七の子分、猪助役で出ていました。こちらは後年とまったく変わらない演技でした。
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