旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

下町ことば

昨日は一日中枕絵を眺めて過ごしました。時代順に見ると浮世絵の技法の進化がわかります。どれも同じような顔に思えたものが、絵師によって違うことも知りました。
絵だけではなく、それに添えられた文も読んでみました。枕絵は版本であってもストーリーはありません。異なったシチュエーションでの性交が描かれ、地の文はなく、登場人物の会話が書かれています。「あゝあゝ」「いゝいゝ」とか「いくいく」のようなお約束はさておいて、当時実際に使われていた市井の人々のことばを読むことができます。これが面白いのです。
北斎の枕絵の女性たちの伝法な口調に聞き覚えがありました。子供の頃に近所のおばさんたちが使っていたことばなのです。私が育ったのは浅草の外れの橋場町、震災、戦災に焼け残ったところです。
百日紅』のお栄も同じようにしゃべります。一人称は「おれ」です。私の時代にはそれが「あたい」になっていました。成長につれ「あたし」「わたし」と変化したものです。
下町ことばを自然に使えたのは私の年代まででしょうか。それも地域が限られているはずです。今も落語の中の会話の多くは下町ことばですが、聞いていて背中がこそばゆくなることがよくあります。