旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

年金に歓喜するチャールズ・ラムさん

中学校に入学し、図書室で最初に借りた本はメアリイとチャールズのラム姉弟による『シェイクスピア物語』でした。夢中になって読みました。その影響で河出書房の世界文学全集のシェイクスピアの巻を買いましたが、読み進めるのに苦労しました。「なんだかわかんないよ」と言ったほうがいいでしょう。でも『シェイクスピア物語』を再読することはなく、あの本とは一度の出会いでした。
チャールズさんがエリアの筆名で書いた『エリア随筆』はよく手にする本です。何度読み返してもおもしろい。先日は「年金生活者」を読んで、吹き出しそうになりました。
ラム家は裕福な家と思っていたのですが、チャールズさんは14歳で働き始めました。南海商会に3年、その後東インド会社に移ります。51歳になった彼は職場の同僚から気づかれるほど心身共に疲れていました。それを口にも出してしまいます。ある日全重役の集まっている応接室に来るように言われました。すわクビか。それは困る。
長老の重役はチャールズさんの功績を褒め称え、俸給の三分の二にあたる終身年金を支払うのでいつ退職してもかまわないと告げました。彼は一礼し、「永遠に」家に帰りました。
チャールズさんは「身の幸福を、ただ理解することはできたが、あまりにも混乱して、しみじみとその幸福を味わうことはできなかった」(山内義男訳)ほど喜びました。「人間にとっては、自分の「時間」を一切自由にし得るということは、一種の「永遠」なのだから。私は、使い切れないほどの時間を、掌中に握っているような気がした」そうです。わかるなぁ。
しかしチャールズさんの永遠は10年に足りませんでした。(私の永遠は4年半になりました。)