旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

季節の発見

四季というものを意識するようになったのは中学生の頃でした。


小学生までの時間は一年という大きな括りしかなく、それがとてつもなく長いように感じられました。一年の始まりのお正月は、数え年が使われてた東京の下町ではひとつ年齢を加えることでもありました。元旦に始まる一年は、自分の年齢をも意味していたのです。
師走生まれの私の弟はすぐにお正月を迎えましたので、近所のおばさんたちから「生まれたばかりだと思っていたら、もう二歳かい。」などと声をかけられていました。


季節の発見はやはり「春」からでしょう。卒業や入学があり、桜の花がそれに彩りを添えます。桜自体は小さな頃から見ているのですが、それが「春」と結びついたのが中学一年のことでした。
記憶に残る最初の桜は、父と一緒のものです。場所がどこであったのかは覚えていませんが、父の仕事仲間たちのお花見だったような気がします。地面ではなく一段高いところに茣蓙が敷いてあり、そこに上るのに苦労した思い出があります。
そのときに撮った写真が残っています。写真の中の父は酔っぱらい、笑いながら私を抱き寄せています。あのときの酒臭さは五十年以上たった今でも忘れていません。


私は「秋」をどこで発見したのでしょうか。
省線(現JRのことですが鉄道省がなくなった後も下町ではこのように呼んでいました)の上野駅を公園口で降り、少し歩いた東京文化会館と西洋美術館の間にそれはありました。