旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

お奉行様、それはないよ!

「大工調べ」のお奉行様のご沙汰、はっきり言って源六さんに厳しすぎます。
三三さんは、与太郎のためた店賃が一両二分と八百(文)、道具箱を取り上げられ仕事ができなかった期間の手間賃を五両としていました。四分で一両ですから店賃は1.5両と少々(銭貨一文は一貫の千分の一で、一両は四貫です)ですから、源六さんの持ち出しは3.5両弱となります。
江戸時代の大家は、家作の持ち主ではなく現在の管理人にあたります。実際は店子で、たぶん店賃を棒引きしてもらうくらいが関の山でしょう。そんなわけですから、源六さんも焼き芋屋をたずきとしています。
そんな人に、店賃滞納のカタに道具箱を取り上げたからといって、3.5両弱の支払いを命じるのは可哀想です。おまけに源六さんは、棟梁には商売をくさされ、お奉行には質屋の鑑札なしでカタを取るなどお上の法に背く不届きな奴、と脅される始末です。踏んだり蹴ったりとはこのことです。
相殺してお互いに取り分なし、というわけにはいかないものでしょうかね。


志ん朝さんの金額は三三さんとは少し違って、それぞれ一両八百(文)と二百匁としていました。
一両を六十匁として約3.33両。おふたりとも金額こそ違え、比率はそれほど変わりません。ただ、江戸時代の通貨の換算率は複雑ですから、噺を聞きながら金と銀を比較できたお客様はどれほどいたのでしょうか。*1
「お前ほど無知じゃないよ」という声が聞こえてくる気もしますが‥‥。

*1:一両が五十匁の時代もありました。