旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

面白すぎる自伝

「田中清玄自伝」を読みました。「面白すぎる!」が素直な感想です。
私が田中清玄について知っていたことといえば、全学連に資金を提供した右翼(転向者)といった(例の通り)月並みなものでした。
この自伝(インタビュー)が世間の話題をさらった記憶はありませんので、たぶん転向者の最後っぺくらいにしか扱われなかったのでしょう。この本に書かれたことが事実であるならば、戦後の日本を作り上げた陰の功労者は田中清玄となるからです。
しかし、EUの発足にハプスブルグ家の当主であったオットー・フォン・ハプスブルグが関与しているのであれば、田中清玄の語ることはあながちホラ話とはいえなくなるでしょう。
そのへんのところは私には判断がつきませんが、15年以上前に彼の語ったことが、現在まで届く射程距離を持っていたことは間違いありません。これには驚嘆しました。学者や評論家たちの述べることが、数年先すら見通せないことを私たちは身にしみて知っているからです。あの吉本隆明でさえ、彼が心底嫌った床屋政談を自ら語るようになってしまったのですから。


もちろんこの本のすべてに対して好感を持ったわけではありません。旧家、名門を高く評価する、出自によって人の価値が決まっているというような考えは、会津藩の家老の子孫であることに自負心を持っていることはわかるのですが、私は認めることができません。
また、出獄後あれだけの短期間で財力(権力)を持つようになったのはなぜか、彼は語っていません。


玄爺ちゃん、語りたくてしかたなかったのでしょうね。いい聞き手を得て、思い存分話せたことに満足したかのように、彼はこの本の上梓を待って亡くなりました。