旭亭だより

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満洲に関する本

2月に『満洲国 - 交錯するナショナリズム』(平凡社新書)を上梓した鈴木貞美のインタビューを東京新聞で読みました。鈴木は歴史学者ではなく、この本は満洲史ですが、その文化についての記述が多いようです。読んでみたいのですが、本は増やさないと決めています。今すぐできる、手許にある満洲に関する本のつまみ読みをすることにしました。
文学の面から満洲を考察した川村湊著『満洲崩壊 - 「大東亜文学」と作家たち』(文藝春秋/1997年)の第一章「満洲崩壊」は1945年8月12日に満洲の建国神廟で行われた御遷座の祭典から始まります。満洲国皇帝愛新覚羅溥儀御神体である鏡を携えて日本に脱出しようとしましたが、8月19日に奉天の飛行場でソ連軍に捕まりました。建国神廟については興味深いことが入江曜子著『溥儀 - 清朝最後の皇帝』(岩波新書/2006年)に書かれていました。この神廟は「満洲国のものではなく、あくまでも満洲国帝室のためのもの」(109頁)だったのです。
満洲崩壊』の終章「ワタクシドモ ハ マンシウ ノ コドモ デス」第一節「ある「満映」人」冒頭に「赤川幸一」という名前が記されています。彼は作家赤川次郎の父で、満洲映画協会企画部に勤務していました。しかし、映画好きで知られる赤川が、その後東映幹部にまでなった父については何も書いていないそうです。山口猛著『幻のキネマ満映甘粕正彦と活動屋群像』(平凡社ライブラリー/2006年)を開きました。
『溥儀』には、溥儀の弟溥傑と嵯峨公勝侯爵の孫娘浩(ひろ)の結婚について、彼女の自伝には軍部によって強いられたものと書かれているが「満洲国が帝政に移行した当時、皇帝の実弟との縁談は浩の側が熱心に望んだ縁談であった」(96頁)とあります。そうなると愛新覚羅浩著『流転の王妃の昭和史』(新潮文庫/1992年)にも目を通さねばなりません。
1937年2月に二人は婚約します。その翌月に発布された「帝室大典」は、皇帝に子、孫がいない場合は弟が継承すると定めていますが、溥傑は帝族から除外されていました。溥儀に男児はなく、生まれる見込みもありません。嗣子がいない場合には「帝室大典」に付帯する「覚書」によって「天皇ノ叡慮ニヨリ帝位ヲ継承セシムル」ことになっていました。
満洲についての本となると山室信一著『キメラ - 満洲国の肖像』(中公新書/1993年)を外すわけにはいきません。安冨歩著『満洲暴走 - 隠された構造』(角川新書/2015年)も書棚にありました。佐野眞一著『甘粕正彦 - 乱心の曠野』(新潮社/2008年)は、処分していないはずですが見つかりません。
また寄り道しちゃったようです。