旭亭だより

年金暮らし老人の近況報告です

鶴屋南北『東海道四谷怪談』

高校時代に戯曲しか読まない友人がいました。彼は同時代の日本の戯曲や、浄瑠璃や歌舞伎の脚本はまったく読まなかったので、私と共通の話題はなかったのですが、本好きということでつきあってくれたのでしょう。性格の悪い私は、親しくなる前の彼を「気取った奴」と決めつけ、距離を置いていました。彼はカトリックで、姉は修道女でした。
河竹繁俊が校訂した『東海道四谷怪談』(岩波文庫)を読んでいます。何度目かわからないほどで、本自体も二冊目になります。といっても、熱心に読み過ぎてぼろぼろになってしまったわけではありません。今手許にあるのは2002年発行の19刷で、初刷り(1956年)から改版されていません。
台詞が現在の口語とほぼ同じことに驚いています。底本の一種は初演時のものの透写本ですから、文政期の江戸の人たちと私たちは会話ができそうです。わからないのがはやり言葉で、これはいつの時代にもいえることでしょう。語釈でも「未詳」となっています。